
はい、はい。
あ、犬・ニューヨーク、と書いて、けん・ニューヨーク、と読みます。ここはそう読ませてください。すいませんね、なんかややこしく。はい、なんかややこしくて、です。ややこしいね、って言われることは割と多いですよね。でもそんなところも含めて僕、というかポピーナというか、ポピーナっていうのは帽子被ってる女の人のことですけど、ほら、あそこで砂に絵描いてるフランス人なんです。だからこのややこしいところと、砂に絵を描いているところ、そのどちらも含めて僕とポピーナなのでそこは勘弁してやってもらえませんか。
盛り返したったわ。
あ、すいません。ついぞ本音が露顕いたしました。
なんか初対面の時よりも今回の方が随分と盛り返したんかな、という実感が少なからずあったため思わず、盛り返したったわ、と忌憚なき本音が出でてしまい申した。ごめんごめん。ごめんなさいね。
なにを盛り返したかってこの犬・ニューヨークという人間をより深く知っていただけたのかな、ということに関してなのですけれどもね。
正直言って前回、つまり初対面の頃ってやっぱ僕も緊張してたのもあって、名刺というかティッシュにマジックペンで「僕は犬・ニューヨークです。」と書いてお渡ししたのが関の山で、したら貴方は当然まるでそれが世界の法則かのようなごく自然な物腰で、はいはい、いぬ・ニューヨークさんね、よろしくだね、とぞ言うて、僕は僕でそれをさして訂正することもなく此処へ来しなの電車で斜め前の席に座っていたひたすら鼻くそをほじっては食べているオッサンのこととかを思い出して最悪な気分になっておましたので「もういぬ・ニューヨークでもけん・ニューヨークでもどっちゃでもええわい!」なんて自暴自棄な気持ちの気持ちになっていたのみでしたからね。あれぞ最悪の通勤快速でした。快速の快、の部分。快く爽快な部分が全く無く、どちらかといえば不快な思いだけがこの細身を覆い尽くしてしょげしょげ気分になりて、だからなんて言うのかな、通勤"不"快速とか言うたら嫌われるのかな。誰に?ポピーナに。え?ポピーナはそんなことでゴチャゴチャ言わへんやろ。むしろ褒めてくれるんとちゃう?「ユーモア。」とか言うて。だって事実だからねぇ。僕にユーモアがあるのは事実なのだからねぇ。たとえそれが幻のようなものであったとしても…。あの夏の幻のようなものであったとしても…。
でも今回はほら、そんな前回の反省も踏まえてちゃんと僕は私のことを「けん・ニューヨークです。犬とニューヨークが好きなのでその二つを合わさった感じにしていこうと思って思いました。そして犬飼ってニューヨークに行く、という夢を叶えるために跳梁跋扈の八面六臂、天網恢恢疎にして漏らさず不退転の決意でこの国を良くしていきます。ブスにとって暮らしやすい国にしていきます。」と万感の思いを乗せて自己実現の自己紹介をすることが出来たではないですか。
ここへ至るまでの道のりが感覚的に易かったかというと決してそんなことはないはずです。私、犬・ニューヨークの出来ることの全てを投じて今日という日に臨んだというのが今のところのこの揺るぎない感じであります。
そんなこんなを為している内にポピーナがカブトムシがいっぱいいる木を見つけてきました。それはまるで、カブトムシが木に集まっているというよりかは、木そのものからカブトムシが湧き出でてるんとちゃうかな、そんな勢いでカブトムシがおる。これは本当の話。ということでした。ポピーナほどにカブトムシ好きなフランス人は他には聞いたことがないですからね。ポピーナはカブトムシでやったらナンボでも飯喰えると言っていた時代もありましたよ。ちょっと前にはなりますけれども犬・ニューヨークにもそんな時代があったよなあ(笑)。
まあ冗談はさておき、金の切れ目が縁の切れ目、この度はどうも、この犬・ニューヨークをありがとうございましたね。帰りますね。もう少ししたら本・ニューヨークという者が参りますのでお楽しみになさってくださいな。