犬の頭の撫で

 

私は苦手が多い。苦手の多き人生を歩んでいる。苦手の数多ある。

もっとこう、銃弾の雨の中を少々の被弾すら物ともせず進んでいくサイボーグ者のようにストロングな感じの大人物になる私であると予想しておりましたのに実際には役所での各種手続きとか椎茸とか、あとミナミの帝王とかの「これで第一抵当はワシが手形をアレしたからそれで謄本を何かしらしたら元金が利息が0.5%の確率で平身低頭して故にこのチリチリ頭の本懐をワシが一本化するとどうでしょう。おたくのとこの不動産は正式に、なぜか法的にもうワシのもんになってこのチリチリ頭の過払い金は不当請求とかによるアレやから全額返さなきゃだからもうおたくの会社は終わりやねん。これぞナニワ金融道じゃ!」みたいな難しい法律用語やら利率が複雑に絡み合っておりますが、なにしろ仇は袋の鼠になっている、みたいな一回聞くだけでは脳内に「はあ?」しか浮かばないようなセリフも苦手である。

たとえば悪徳債権会社の者どもを銀ちゃんが、なにがタックスヘイブンじゃボケェ、知るか!とか言って爆殺していく話ならば海外でも人気が出そうな気がするけれどどうだろう。ちなみに銀ちゃんのサイドキックはみんなは誰が好き?俺はなんやかんやで山本太郎ちゃん。

とそんなことはいいんですけど、とにかくやたらと苦手とするものの多い人生だよねぇ、でもそれが人間だよねぇ、でもそこであきらめずに苦手を少しでも減らせるように努力した方がいいよね!と思いながらもなかなか苦手の減らぬすっとこのプリンプリンの私でありますが、中でも苦手なのが「しかめっ面」でございまして。

 

自分自身に向けられたしかめっ面はもちろんのこと、街中でしかめっ面で電話をしている人、電車の中でしかめっ面でタヌキ寝入りをしている人、しかめっ面をし過ぎて尋常の表情がしかめっ面になっちまっている人、「ご覧の通り私は今、不機嫌です。」を丸出しにするしかめっ面の人を見るたびに、死ね、と思うかというとそれは過激派なんですが、嗚呼、苦手苦手、苦手やわ、と京都出身者特有の二回繰り返すやつ、違う違う、遠い遠い、日傘日傘、のように、苦手苦手、と二回繰り返して言ってしまうつまり故郷の訛りが出んばかりに苦手だということが言いたいです。だから言いました。言わないと伝えられないと思ったので。

 

ので世の中からできるだけしかめっ面の人が減るが良い、と願う私なのですが、そんなしかめっ面に心当たりがある方に朗報がありまして、てゆーかしかめっ面の人に言いたいことがありまして、それは、

「犬の頭の撫で。」

と言うことなんです。

 

犬、というのは皆さんご存知のとおり人類の友人なので御座いますが、この犬の頭を撫でることによってしかめっ面がピンピンコロリと解消されて金運アップ、クライアント様の収入アップ、彼女も出来れば石油も掘り当てると様々な効果・効能が期待されることが科学的なもので証明されておりまして、トップブリーダーも推奨しているし心が整うし、それはキャバ嬢みたいな穢れた生き物がやたらと犬を飼っていることにも明らかなのですから、それはやはり犬を撫でることには素晴らしい効果・効能があることの証左なのではないでしょうか。証左ってなんですか。

 

ほならどないやねん、と。お前みたいなチンチラぽっぽになにが分かんねんと。そうやってまたしかめっ面ユーザーどもはしかめっ面になっておられることでしょう。

そんな時こそ、さあ、犬の頭の撫で。

犬が苦手という方は猫でも良いでしょう。猫の頭の撫でにも犬の頭の撫でと同様の効果があると科学的に証明されているのです。

猫も苦手という方はフェレットでもカバでも良いでしょうし、生き物を撫でることに気がすすまないならふわとろオムライスでも撫でておけば良いのではないでしょうか。

 

それでしかめっ面が解消されるかどうかは知りませんけど。