ウィーケンダー

 

ドゥーワップのリズムに合わせて今週末も言わずもがな、ウィーケンダーたちの怒濤のウィーケンドの始まっり始まり。

ウィーケンダーの活動目的とはつまるところ、自分の居場所を遮二無二探し回ることだと多くのウィーケンダーが語っているが、そんなものは個人の自由なので勝手にしていただいて構わないのですが私が気になるのは、ウィーケンダーの活動目的である自分の居場所探しについてなので御座いますが、最近のウィーケンダーたちは何だか自分の居場所を探すその過程にばっかりリキを入れていて、週末のスケジュールを真っ黒にすることだけにリキを入れていて、自分の居場所探しというよりはスケジュール帳の週末のとこ真っ黒塗りが目的になっているような、つまり手段が目的化してしまっているのではないのかなってちょっと気になって気になって、そんなアフターファイブでは当然何も手につかないので今一度、おいウィーケンダーよ、貴様ら最近では手段が目的化の一途を辿っているように僕の目からは見えるのであるが、僕だけですかね?だったら別に大丈夫なのですけど。といった毅然とした態度で迫り来る週末よりも速くウィーケンダーにバンと尋ねてみようではないか。

 

ひとつ言っておくと、僕の言う「手段が目的化している」とは具体的にどういった行為を指すのかというと、僕の旧い友人にトール(仮の名前)というとても気さくで気のいい、気に関しての欠点がまるで無い気のスペシャリストみたいな気の者があるのですが、そのトールというのがこれまた偉大なることには、多くのウィーケンダーが「手段が目的化」してしまっているのに対しこのトールは、

「俺は手段が目的化するようなことにはなりたくない。俺は目的を目的化したい。化ってゆーか、もうすでに目的になってる。だからこのままでいく。ずっとこのままで。」

と声高々に宣言するという手段を目的化しないスペシャリストなのでありますが、そんなトールとはいえ本人も気づかないうちに手段が目的化していることがあり、しかしこれは未だトール本人には言っていないのでショナイでお願いしたいのですが、たとえばトールが僕や友人に対して何か秘密の話をしたとしますよ。あまり他人に聞かれては困るような秘密の話を。若しくは西田をサプライズで喜ばせようとする計画の話をしている場にたまたま西田が「おー、おつかれー。」とか言うて闖入してきたとしますよ。つまり秘密の話をしている時で御座いますやね。

そういった時にトールは御多分に漏れず人差し指を唇に当てて「しーっ。」とやるワケなのですが、問題はトールは「しーっ。」とやった後の余韻がごっつ長いというか、顔は僕の方に向けたまま、うふふ、といったいたずらっ子の笑顔を浮かべて視線だけを左右に、といってもこれは実際に左右警戒しているわけではなく「周囲をジロジロ。」というポージングをして僕に、ターゲットが来たで注意せよ、と促しているだけなんですけれども、そうして左右に視線を送った後に再び僕の方をいたずらっ子の笑みと共に見据えて「しーっ。」っと。

そしていよいよトールの背後まで西田が迫るとトールは目を見開き肩をすくめ口をすぼめつ西田、僕、西田、僕、と忙しなく視線を動かし「やばいやばい、西田きてるー!(焦り)」みたいな動きをし、そしてまた「しーっ。」っと。

これにはさすがのアホの西田も勘付いて「ん?どうしたか?何か俺に秘密の話?」みたいな感じ自分に対する秘密の話であるということにガッツリ気付いているし、そしたらトールは何か知らぬが楽しそうにして口笛なんか吹いたりして、

「ん?なにがなにが?ピーピー(口笛)、なんでもないけどね。ピーピー(口笛)。」

と明後日の方向を向いてたまに僕をチラ見したかと思えばいたずらっ子の笑みを浮かべつ「しーっ。」っと、しかも今回はウインクまで足していただいて、そもそもさっきから僕は一度も口を開こうとしていないにも関わらずひたすら僕に「西田来たれり。さっきの秘密の話は西田にゃ秘密だぜ?」みたいな態度を崩さずに、西田は更に我々を訝って。

 

そう、お判りの通りトールは西田に秘密の話を秘密にするという本来の目的を忘れ、秘密の話を秘密にする手段である「しーっ。」とそれに付随するアクションを楽しみ過ぎてもう「しーっ。」をやることが素敵、「しーっ。」をやることが目的となっており、これが世に言う"トールの手段の目的化"と呼ばれるもので、気づいていないのはトール本人だけなのだが、先述のとおりトールは非常に気さくで気の置けない、気の合う気のスペシャリストなのでありますが、唯一この"トールの手段の目的化"だけがトールのしょうもないところであり、今回もトールがそれをしてしまったが故に僕らの週末のサプライズで西田のスマホを割るというサプライズがあわや西田にバレてちょっとダルい感じになってしまうところだったのですけども。

まぁ僕が取り繕って西田にはすんでのところでバレずに済み、結局は週末にサプライズで西田のスマホを割る方向で話が進んでいるので良かったのですが、もしバレていたら僕らと西田の間にある友情に亀裂が走っていたことはほぼ間違いないでしょう。

 

 

そんなわけで手段の目的化をさせない模範的ウィーケンダーを目指して世のウィーケンダーには今一度ふんどしを締め直していただいて、その締まったふんどしに西田の割れしスマホを突っ込んで暖をとってもらって、それで今年の冬は越せる……のではないか。