ツインな

 

髪型次第でオッサンにもオバハンにも見えることの出来る者のそのあまり良くない意味での中性的な感じを私は否定しないだろう。たぶんしないと思う。しないんじゃないかな。まあちょと覚悟は、いや、しない。

 

服装は完全にオッサンであるが良く見ればオバハンっぽい。オバハンが如くハンドバッグを振り回して歩っているが声を聞くにどうやらオッサンっぽい。街にはそんなアシュラ男爵が右往左往していて、いやぁ人間とはまことに、ケンタッキーのパーティーバーレルみたいなもんですわ、と泣けるほどに意味不明な比喩で俺を濁すような真似ばかりしてしまう始末で。

 

そんな夜には私の中にいるもう一人の私、私が平々凡々と、人様に迷惑をかけることなく生きられるようにディレクションをしてくれている、言うなればポップ・タイガー助監督みたいな儚げな存在に語りかけることにしている。

 

「Hey ya,いやぁ人間とはまことに、消える魔球みたいなもんですわ。ドキドキタイム経ての、ワクワクランチ得ての、それの繰り返しでちっとも前へ進んでいる感じを感じないの。なんというか、フォワード感がない?みたいな。ちなみに小学校の頃の同級生にフォワードのことをファオワードと叫んでいる者が存在したのですが、そこへきて俺ときたら小学校の時からちゃんとフォワードって叫んでいたし、計算ドリルに関してもほとんどカンニングで済ませてるとはいえ、なかなかの鬼の好成績を残せていたので、そういった面での成長過程をこれまでどおり褒めて欲しくて。だって人間とはまことに亜熱帯のカンフーマスターみたいな感じではないですか。」

 

「ふむふむ、悩める衆生よ。てゆーか悩める私よ。私で良ければ其方の悩み辛みをザックリとではあるが解決の兆しを見せしめてやらう。まあ例えば待ち合わせになったとして普通であれば駅前のコンビニの前で待っているさかい、とか、イスラマバードの関所前で待ってるさかい、とか、黄色いカバンを持っている、とか、完全に禿げている等のどっかしらのアイコニックなフォトジェニックなランドマークなポイントをランデブーポイントにするのが通例ってのは悩める私にも分かり得るよね。それがさ、例えば、駅前の大きなモニュメントが補修工事の真っ最中なのだけれど、そのぐるりに並べられた無数の真っ赤なパイロンのそのどれかの先端を触っているのが私です、なんてな感じで待ち合わせた経験ってあり得る?私にはそんな経験は無いのだけれども……(泣き)。そんなトリッキーな待ち合わせの仕方こそがこの春のトレンド。一際クセの強い待ち合わせ方法でカレをひたすら辟易させてみては?みたいな困った特集が組まれていたとして、それをそのまま実行することの愚かさこそが広告代理店の飯の種でね。いや、私は広告代理店勤務では無いのだけれども。」

 

ほら、すっごく気合いの入って、このジェネレーションで本当に良かったなって、中にはめちゃくちゃ不細工な奴もそりゃあ居るには居たよ。でもそれが何?それで何か特別に迷惑がかかったみたいな話があったのか?誰に迷惑がかかったとしても、私は絶対にちゃんと謝りに行く。謝る時も大きなおっぱいのこととかは考えずに、猛烈強烈に真摯に、謝られて良かったと相手が心の底から思えるように。そしてまた、前みたいにふたりで笑い合えるように……。

 

そう考えるとなんだか今までやってきたことの全てがもう一人の、心の中の私のおかげでこんな感じで上手くいっているのか……。