周you気分 反吐me分

 

山が動いた。

指が動いた。それは君をビッシナと指し示すための指のフィンガーでありまた、一周回って私自身、つまり私を指し示す指なのである。

 

人の器は様々で、牛を盗まれても「ええのや、ええのや」と笑って許す器のデカき者もいれば、襟足を短くカットされ過ぎたくらいで村ごと焼き払うような器の小さき者もいる。

私はどちらかというと、サイズで言うとMサイズくらいの器を持ちており、友人たちからも「クラちゃん」や「ホメやん」、「鬼猿」に「ババ焼き」と様々なバラエティのニックネームで呼ばれており、そのほとんどに私が納得をしているというのがこの奇特の最たるものではなかろうか。

 

この人の器というものが大事なポイントであり、これが小さき人間の場合なら「尻のアナルの小さい者」とかなりのゴリゴリの悪口を叩かれるのであり、もっと酷しになると「玉レス男子」、「ノン・アヌス」、「人の形をした塵」等、親が聞いたら泣いてしまいそうな、でも泣いて笑って色々あったけどそもそもこの子は我々夫婦が溜めに溜めた垢を近所の丘に植わる菩提樹の下にて刮げ落としてそれを捏ね、人の形に成形したら何故だか喋ったり歩いたりとモノホンの人間のガキのように振る舞うようになった奇跡の産物であり、最初こそ戯れに作った垢の人形が動き出したということで夫婦共々ドン引きを禁じ得なかったものの今となっては立派な家族の一員であり、垢で出来ている、という生理的に無理な感じにさえ目をつぶればこれからも仲良く家族三人、核家族、なんとかなるでっしょい!と気合い一発。

 

山が動いた。

指が動いた。垢で出来てのこの子が夫婦二人を垢で出来た指でビッシナと指差し垢で出来たその口を開きておもむろに話し出す。

 

「いちいち、垢で出来た、って言うな。俺はお前らみたいな不潔な夫婦の混沌カオスと秩序コスモスの歪みから産まれた奇跡の産物であるというのに。

俺がお前らによって生み出されたのはしっかりとした理由がある。

それはお前らもよく知ってのとおり、俺の必殺技である垢ビームによって東の城に棲む鬼どもを討伐することだ。鬼は我々を苦しめているからね。だからこの俺の垢ビームで、犬猿雉のお力も借りずに息子一匹で立ち向かうのよ。それが俺の運命-さだめ-(ディスティニー)よ。

そしてもうひとつは、永らく子どもを授かれなかったお前ら夫婦に、子育てというものを知ってもらう為。親の愛を知ってもらう為。

お前らは垢で出来た、しかも喋ったり動いたりする不気味極まりないこの俺をまるで実の子のように手厚く、愛を持って育ててくれた。会話の端々に、垢で出来た、というワードが挟まるとはいえ、まるで人間のガキと同じように育ててくれた。ありがとう。

そしてお前らは愛を知った。だから俺は旅立つ。

 

 

お父さんお母さん。私は東の城に棲む鬼どもを必ずこの垢ビームで退治してきます。必ずこの手で、お父さんとお母さんの垢で出来たこの手で、必ずや。」