
学校にジャンプを持ってくるクセに絶対にメイトには読ませず終始一人で読んでるヤツとかけまして、キャンプだと言っているのにヒールを履いてくるヤツと解きます。
そのこころは、やっぱり周りに合わせること、自分がこういう行動をすればおそらく周りはこう思うだろうという想像、たとえば学校にジャンプを持っていけばそりゃあ他のメイトも「読ませてーな」となることは想像に難くないし、キャンプなのにヒールで参加すると「此奴、薪拾う気ないやろ」と思われるであろうことも同様で、まあ確かに人間は自分が一番大事で自分が一番可愛いと考えていて何の問題もないのであるが、にしたって多少は周りを慮るの心、優しきホスピタリティも持っておいてもらって、だから最近よく目にするところでは友達グループでつるんで歩いている者共の中に一人、イヤホンをしたまま歓談している者が居ることの違和感で、友達が決して多くない俺からするとせっかくかけがえのない友達グループとかけがえのない他愛もない話をしているというのに、そんな時にわざわざ聴かなければいけない音楽やスピードラーニング等絶対に無いのに、それでもイヤホンを外さずに、たまに聞こえづらかったのかイヤホンを片耳だけ外して聞き返していたりして、もうそれやったら音楽聴くのやめれよこのドチンチン野郎とか思うんで、そしてそういった友達グループのやり取りの一部始終を多少クサクサした気分になりつ只管に眺めている俺は電車に乗って何処に行くつもりなんだろうのこころです。
そうして行き先知らずの賃乗車(ちゃんと正規の料金を支払って電車に乗るのこと)をしていると、今自分はこのように賃乗車によってまあ何処に行くのか行けるのか分からないとはいえそれが電車である以上必ず何処かにたどり着くのは現実リアルであるが、こうして敷かれたレールの上を走る電車に乗っていてもしかし俺の人生はとてもではないがレールに乗れている雰囲気が無く、なんなら大海原を漂う小瓶に詰められた異国への宛ての無い手紙のような、行けない、漂っている、という自由と不自由の間を行ったり来たりの切磋琢磨なフィールに陥って立ち直って、わかった。
俺が大海原を漂う小瓶に詰められた異国への手紙であるならば、今から俺はその手紙になるよ。手紙のペーパーになるからみんなでその手紙を世界の真ん中で読もうよ。お酒や料理も持ち寄って、焚き火してヒゲのおじさんのギターでフォークを歌って、そんな容赦なきジャンボリーな雰囲気の中で俺という手紙を読もうよ。それで俺の魂の行方がわかる気がする。します。
ほらほら、読もうよ。
「HELLO OUR NAME IS HUMANBIRD.
父さんがくれた熱い想いと母さんがくれたあの眼差しと吉野家のアタマの大盛りで出来上がった完全無欠のサイボーグの身体によってこのチンチラポッポの世を泳ぐダーティハニーなんです。
まことしやかに囁かれることには、俺たちは、来るところから来て、行くところに行く、というライフタイムが甚だしき顕著さであり、そこに関しては何人たりともこれを邪魔することは許されないんです。だそうです。
だから俺たちは来るところから来て行くところに行くために今回こうして異国の地へ参れと小瓶に手紙と夢だけ詰めて海に流し始めたというわけでね。まあそれが良いか悪いかは別として。
ZX通称"ゼッペケ"は絶対にヤンキーに目つけられてパクられるからやめとけって言ったのに、そんな俺たちの忠告にも耳を貸さず、あいつはよりにもよって白のゼッペケを中古で買いてしもうてね。ほたらそれみたことか、買って三日目でちょいとスーパーに寄りたたった10分の間に哀れ、アナル、其奴のゼッペケは今はどこで何をしてるんやろうね。元気にしているのかな。もし異国のあなたの処にて白のゼッペケを見かけたらご一報ください。其奴のゼッペケである可能性がすっごく高いのでね。
じゃあそれだけよろしくお願いします。
追伸
其奴のゼッペケはボディの左側の所に悪魔みたいな格好をした金髪ギャルのイラストが描かれたシールが貼ってあります。もうその時点でセンスゼロなんですが、本人はカッコいいと思っているみたいでした。」
たいして内容の無い手紙であることだけが俺を安心させる。俺を自由にさせる。