アホのアポカリプス

 

この世には、アホにしか告げられない黙示みたいなものがあるということを皆さんはご存知でしょうか。私なんかは取り立ててアホというワケではない、というかどちらかというと至極賢き君子で末は博士か大臣か或いはそのどちらもか、なんて持て囃されるほどに賢明なひとつの命なのでございますが、何故か私の元にも特別にアホにしか告げられない黙示、アホのアポカリプスが稀に告げられてしまいますのでそれが一体どんな内容かというのをかなり適当かつ上から目線でご紹介していきたいなと感じ入っております。

 

まず初めに私に告げられた黙示は、「汝、あまりにお醤油をかけ過ぎてはならぬ。他人の飯に。」というものでありました。

これは私が眠っていると夢の中に白い髭を長々と蓄えた色黒の、なんというか、家が無い感じのオジさんが現れて私に告げていった黙示でございます。そのオジさんは袈裟というか、薄汚れた白い長袖のワンピースを着ておられたのですが、そのワンピースの胸の辺りにかなり大きめに"デカチン"とプリントされており、こんな変なワンピースを着ているヤツに私のライフワークである他人の飯にお醤油を大量にかけるという行為を制限される筋合いは無い、とせっかくの黙示を突っぱねて和気藹々と過ごしておりました。

 

そんな折、私に二度目の黙示がアレされたのです。しかし二度目は一度目とは違い、改札口のあの残金150円とかが表示される液晶のとこに突如としてブリンっと表示されました。それも、お買い物の帰りに、です。

内容は前回にも増して過激なものでありました。

「汝、いま何時?」

ダジャレです。ダジャレを黙示されて致しました。独自の方向性でやってる方なんだな、というのがこれで何となく分かったのですが、あくまでアホのアポカリプス、このハイブロウなダジャレがアホに通じるのでしょうか。私にはそうは思えませんが。

当然私はその黙示には何の興味も示さずにいつも通り気ままに、ありのままに、和気藹々と過ごしていたのでありますが、そんな和気な私に三度黙示がアレされたのです。

 

それは夏の終わり、自室にてパソナコンでイーンターネットに接続していた時にパソナコンの画面が急に真っ暗になり、ややあって画面に再び明かりが灯った時に起こりました。

画面に映るのはそう、"デカチン"とプリントされたワンピースを着る家なき子風の御仁。

「また来たか…。」

それが私の正直な感想でした。

三度目ともなるとさすがに我慢強し私もイラッとしてきて今日こそはなんか言うてやろうと息巻いて。

「あのな、これはアホのアポカリプスやろ。私はアホではないのに何故に三度に亘ってこのアポカリプスを告げられないといけないんですか?やっつけ仕事でしょ?それで成し遂げたと思われては困る面もある。無いけど。とにかくもう私にアホのアポカリプスは必要のないことなので今後はどうしても!お願いするけん!という時以外はあんまりこういったことはやめてほしい。やめて。」

画面の中の家なき子風のオジさんはしかし表情を一切変えずに、現代のシャーロックホームズみたいな態度がどんな態度なのかは分からないけど、なんせそんな感じで我に冷静さ有り、といった態度でシャーロックホームズのようであった。

そんな困ったシャーロックホームズは私の向ける鋭い眼光なんのその、「ズルムケです。」と言い張るがごとく余裕綽々の表情で言って参った。

「汝、ドットとペイズリーどっちが好き?」

また質問系黙示か。もういい加減にしてくれ。

そんな質問に答える義務が私に到底あるとは思えないし、質問内容自体も専門用語を縦毛無尽に使い散らしていてちっくとも何が訊きたいのやらわからない。

二時間ほどガン無視を決め込んでいるとさすがにオジさんも諦めがついたのか、パソナコンの画面は尋常のような和気藹々とした画面に切り替わっていた。

 

 

それ以来私にアホのアポカリプスが告げられることは無くなった。案外あっさりしてるものなのだな、と私はまた日々を和気藹々と過ごしている。