ゴリラサワー

 

12年もののピンダーをおもむろにグラス(しょうもないグラス)に注ぎ込み、注ぎ込む前にもちろんロックアイスは入れていて、そこい12年もののピンダーをおもむろに注ぎ込みてしてサワー用の若干砂糖味のついた炭酸水で割る。

 

一口含めばここは何処だろう。ずいぶん遠くまで来たような気がする。それは少年時代のみんなの隠れ家であり、習字の先生の玄関の雰囲気であり、店主がめちゃめちゃシャクれてるお餅屋さんの朝のもち米炊き、ひとえに懐かしい、そんな安堵感と望郷が全身を包み込む。

 

ゴリラサワーの夜が始まる。

 

私の才能の無さを嘲笑うかのように、外を在来線が走る。

酔いか酔いではないか、それはこの際些細な違いのことで、大して気にせずて良いことで、大事なのはこの瞬間だけでも、何か大きな流れに身を委ねること。遠慮なく恥じらいもなく、ただただ流れゆくこと。

それがゴリラサワーの掟。夏前に交わした約束。

 

そして、ゴリラサワーの夜が終わる。

 

楽しいことだけ思いつかないなら、それはそういう時期だから、と自分を慰めるだけの夜が終わる。

 

寝ると楽になれるか。