
いい声を出したい。いい声で歌いたい。私の声が皆様の心を動かして揺らめいて、そしたら少しは世界平和の片棒を担げるのかしら。礎となり得るのかしら。そうなればとても素敵で、とても才能がある。生まれ持った能力でやっていける。メシにもありつける。それを夢見て生きていて、私は人の三倍もの発声練習をするのよ。
そうでもしないと群を抜いていい声を出すということが出来ないから。抜群したいから私は。
そのための努力はこれを常に怠らない。喉のケアに関しても人の三倍は気を使ってやっているのよ。生姜と龍角散。蜂蜜とトローチ。
喉を冷やさないように夏でも首にはマフラーを巻いて歩くの。薄手だけどね。ストールー。
ストールーに関してはおしゃれアイテムとしても効きが良いのでオススメできるものよ。
テレビで観たマラソン選手の合宿から着想を得た高山トレーニングを活用しているわ。
酸素が少ない状態でもいい声が出せるように肺を鍛えているの。おかげでこの春、晴れて人の三倍の肺活量を得ることに成功したわ。お医者で計ってもらったので間違い無いわね。人の三倍の肺活量は、少なくとも貴方の三倍の肺活量なのよ。たとい、貴方が二倍と言い張っても此方はお医者で診てもらって、それで三倍と言っているので。
滑舌を良くすること。これも大切なこと。
いくらいい声をだしていても、何を喋っているかわからなくては、アレですもの。だから舌の滑りを良くするために早口言葉に外郎売り、J-RAP、を。
いい声を出して、いい声を一体何故私はいい声にかように拘泥する始末なのでしょう。それは貴方にもう一度私の声を届けたいから。涙の雨の中で言った、さよなら、を、今度は感謝の言葉に変えて伝えたいから。
なるべくいい声で伝えていたいから。