カカマンゴ、カカマンゴ

 

文句あるんやったら南の島に行こうよ。南の島に。5人で。5人で行こうよな。声小さいですか?声。小さいです?何も言い返さないんだな。

ここで俺は用意していたウクレレの鞘を払って南の島でガンガンきてるウクレレソング、「にしん」を披露し相手方の反応を伺った。

 

〽︎にしんがだいぶときとる

カリカリのベーコンを用意して

丁重にザオしようね

ピンクのイルカを見た日に

ピンクのヤシの実も見た

チーム全員が見た

 

相手方はとても心地よい気持ちで私の唄を聴いているように思えた。それはまるで眠っているような心地だったと思うし、また実際に眠ってもいた。魂の歌声は時に相手方を心地良き春の眠りへと誘うという。この事例こそその最たるものであった。

 

〽︎にしんのおおみそかへ

オリジナルTシャツを作って

尊重しマナしようね

ハイビスカスが咲いた日に

爺ちゃんは真珠湾で死んだ

戦争とは関係ない時期に

 

相手方はもう完全に眠っていた。その顔は憑き物が落ちたが如く晴れやかで健やかで、あの頃の西山みたいな顔をしておりて私は、

「嗚呼、アナル、私の歌もついぞ来るところまで来た。"聴くアロマセラピー"、そんな異名も今ならしっくりくる。かつて、春はあけぼの、と歌ったブスが日出ずる国に存在したそうだが今となっては、春はあけぼの、では少しくピンナとこない。春は私、のほうがより説得力がある時代になってしまった。もちろん夏も私。秋も私。冬はつとめて、であるがそれはちょっと意味が分からないので放っておこう今は。さぁて、そろそろこの内弁慶の恥知らずを起こしてやりますかっ。」とただただ盛者必衰のことわりをあらわして。

 

私はウクレレに付いているジャックに極太の楽器用シールドケーブルを突き刺した。そう、このウクレレこそは唯一無二の存在、エレクトリックウクレレ、エレレレなのである。そして私は私の身長ほどもある巨大なアンプリファイアの電源を「ファイア!」と叫びながら大袈裟な動き(ウルトラマンに変身した時の飛び出し感をイメージしました)と共にオーン!した。

 

ぶぅーん。

真空管が暖まるまでの約1分間の静寂は私が私のロック魂に火を点けるための助走、いわば暖機のような時間である。

そう。暖機。これは良き例えであると恥ずかしながらこの貧乏人の小倅は自画自賛する。何がどう良き例えなのかと説明すると、車やバイクは、特に冬なんかはしっかり暖機してエンジンを本調子に持って行ってからAXLをギャイとさせるのが望ましいとされている。そうしないとエンジンに余計な負担がかかってしまい、車やバイクの本来持つ素晴らしきが存分に発揮出来ないことになるし、エンジンに余計な負担がかかってしまい、エンジンがその負担で最悪なことになってしまうから暖機は、特に冬は暖機をしっかり行った方が良い。それはもう、私のロック魂も同じで、この真空管が暖まるまでの時間で、特に冬はしっかりとロック魂に火を点けて、1音目から最高のロックを狂熱に包まれたオーディーエンスに聴かせるように心に心がけているのが車やバイクの暖機と似ているからこれは良き例えなのである。

 

さあ、今夜もまた新たなロックの伝説が生まれる。伝説の漁師の伝説が生まれる。相手方にこのエレレレの音を、危険な角度で突き刺してやる。

 

 

「聴いてくれ、"南の島、宝島"。」