
俺は怒りの火の玉と化してこのヨーガリーヒーガリーを爆走するのみ。よいか、俺を怒らせるとこういった雰囲気になるといった事実をよおく覚えておきやがれ。そして、なるべくなら俺を怒らせない方が良い。俺を怒らせないのはもちろんのこと、オラのことも怒らせない方が良い。そして、察しやがれ。相手がもうそろそろ帰りたい感じになっている場合は「ほな、そろそろ行こか。」とおまえから場を切り上げるべし。何故ならそれによって、あ、この人は一見アホのポンポン丸に見えるけど、こうして場の空気を読んでそして宴もたけなわ感を的確に察知しこうしてもうそろそろ帰りたい我が気の赴くがままをノン・ストレスにてアシストしてくれる。あな素晴らしや一見アホのポンポン丸。してその実、めちゃめちゃ気の回るオシャレなカフェバーの店員みたいなスッキリとしてシャン。青色発光ダイオード。といった具合におまえを尊敬して尊び、尊重きてる!これ尊重きてる!といった具合に勝手におまえを、おまえみたいな者を尊敬して尊重してくれますから。おまえだけじゃない。俺もそう。俺はおまえで、おまえは俺で。同じ怒りの塊。同じ激怒。同じ憤怒。怒髪天を突く今夜、世界は爆発する。否、俺とおまえが爆発させる。
たとえば権力者の腕にぶら下がって、そして自分自身もその権力者の権威のおかげでガッチョリと己が身と位をプロテクトされているような気になって、勘違いして、俺のようなおまえのような猛き情熱の者の言うことなどには決して耳を貸さないどころか挨拶すらまともに交わしてはくれないどころか、ギャラ、とかいうて酢昆布を二枚放り投げてくるような鳥のような顔をしたあのファッキン・デスク・ワーカーの聞かん坊を俺は称して"ウノ鳥"と呼び候えばこれは俺とおまえでヴァイナ。有り体に申して亡ぼす。といったところで妙典。
たとえば我々がもし未だ原始人であったとして食糧が不如意になりえて来たので狩りに行こうよ。でも狩りには必要だよ武器。ということでここに三種類の棒を用意する故これを随意に持ってけテケテケというケースにおいて一族の権力者が棒を取りにやって来たのを目ざとく見つけるよウノ鳥は。
「あっ、おはようございまぁす。本日はお日柄も良く、久しき狩りにふさわしい日ですね!さて今回、此方の方で三種類の棒をご用意させていただいてて、嬉しくて、微笑んで、まずはこの棒。この棒は一番スタンダードなタイプで、松の木で出来ており、しなやかで攻守のバランスが良く誰にでも扱いやすい棒となっております。これと言った欠点も無く棒の初心者でも扱いやすい棒となっております。
そして続きましてのこの棒は一見細く短いのですが、先端付近すなわちマンモスにヒットさせる辺りに魚の鱗のようなカットが施してあり、非常に攻撃力の高い棒となりております。全長が短い故に腕力に自信が無くとも素早く振ることが出来ますが、そのぶん防御や牽制に関しては若干不安が残るものとなっておりまして、しかし一族の権力者たる貴方様であれば…」
などと時折お得意の上目遣いを織り交ぜながらクネクネと棒の説明をしてくさるので俺も混ぜてもらおうと思い会話の切れ目を狙って
話しかけて。それは努めて明るく朗らかに。
「おや!あなや!アナル!本日は棒を三種類も拵えていただいたんですか!?これはこれは。」
するとウノ鳥、やおら此方を振り返ったかと思えば、この世にこんなにも不愉快なことが他にあろうか、いや、無い、といった感情が丸出しの凍てつく視線でそれは、あぁ、目は口ほどに物を言うとはこのことかと痛み入るほどに。
暫しあってウノ鳥、ようやく口開いたかと思えばこれがもう。
「はぁ………。」
と一言、相槌とも独り言ともつかないことをボロナンっと言いやがり、しかしこの「はぁ………。」とは実はその言葉の裏に八百万の感情、有り体に言えば侮蔑の感情が含まれていることは明らかでそれは。
「はぁ………。(え?だからなに?だからどうしたん?三種類の棒?見れば分かるじゃない。もしかしてあれですか?貴様にもこの私が、一族の権力者にしました説明と同じように説明するとでも思ってらっしゃらる?ヤバいやん。思考回路が未だ猿やん。進化出来てないやん。どうでもええから森に送り返されたくなかったら早よ棒選んで狩りでも何でも行ってこいや。)」
といった具合に俺に対して万感の思いが詰まった「はぁ………。」であることは間違いなく、それが俺とおまえの怒りの引き金となりて。
もし感情に実体があるなら、間違いなく俺とおまえは次の瞬間に爆裂して、周囲のジャングルを焼き尽くしていたであろう。無論、ウノ鳥もな。でも感情に実体は無いから、感情に実体が無くて良かったね。良かったよね。
して棒を取れ。これは怒りと哀しみのレヴォリューションや。どつき回せ。
俺はおまえで、おまえは俺で。同じ怒りの塊。ウノ鳥、覚悟せよ。