
スポーツ中継を茫と眺めているとやれ勝っただの負けただのが終わった後に各チームの監督や主将、その日めっさ活躍した選手に対してインタビューをバッ!と行っている場合があって、それって面白いよな、の、監督があの局面で何故全員お尻丸出し作戦をチョイスしたのか、の、チーム内での選手同士の恋愛事情について涙ながらに語る主将、の、その主将の恋の終わりを知りながらそれでもティームを纏め上げようとするそのキャプテンシーに逆に感動したと語る相手ティームの主将、の。
そんな中、その試合で鬼ゴリラ活躍した選手、というかもはや勇者のインタビューなんかをバッソラと眺めているとよく聞かれるフレーズがありまして、これがどれくらいよく聞かれるフレーズかというと「ウノ・ジョージが全然月謝を持ってこないんです。」と同じくらい良く聞かれるフレーズでしてそれはどんなものかと言いますと「ゾーンに入る」というフレーズですから。
「ゾーンに入る」。よく聞きますけれどそれが果たしてどういった意味なのか、マジでそんなことがあるのか、嘘ついとんちゃうんか、そのうち私は人のオーラが見えますとか言い出すのとちゃうんか、と僕なんかは心配になるのですがご安心下さい。僕は今日も僕で、今日も元気です。
ゾーンというのはzone、英単語辞書を引きずりまわしてみると「領域。ゾーン。たとえば暖かなお風呂に浸かっている時と冷ややかな水風呂に浸かっている時のキンタマの皮の広さの違い。それが領域。殺すぞ。」と記されておりました。その後、役目を終えた英単語辞書に火をかけてみんなでワイワイと焼き芋をして楽しんでいたところバビロンがご登場なさったので「おい皆の衆!逃げるぞ!明日に向かって走れ!」と極めてカッコええ台詞と共に一目散に駆け出し、龍角散を撒き散らし、現地解散と相成りまして候。
つまり分かると思いますけどゾーンとは或る領域のことでありまして、スポーツ中の極度の集中によって脳が覚醒し超人的な能力を発揮することがあるらしく、その状態、脳がその領域に入ることを「ゾーンに入る」と言うのだそうだよ。
ゾーンに入ると具体的に何がどう普段の自分、ありのままの自分と違うようなことになるのかと言いますと、よく言われるのが、チームメイトの声や歓声がフェードアウトしていきて世界が無音状態となる、高速で回転している筈のボールの縫い目がハッキリ見える、どこをどう走れば相手を抜けるかというのが光の道で表示される(便利)、といった具合に便利な超能力が追加されるらしく、しかも無料で使えるらしいのでスポーツ選手としてはそれはそれは助かってる、便利な、というのがゾーンに入るということなのですが、しょっちゅうゾーンに入れるかというとそげなことは決してなく、スポーツ中に極度の集中をすることはもちろん、禅の心、和の心、指圧の心、好みのタイプ、就職率、築年数、私服のダサさ、離職率、その他森羅万象の条件がピッとなった時にしか然るべきゾーンに入れないという超難関なのであり、それ故にその条件をピッとした暁にはすんごく便利!となるわけでありますな。
そんなゾーンに入っている状態でスポーツ選手が考えることというのはだいたい決まっておりまして、
「これが噂のゾーン。それぞれの競技のスタイル。狂気のプラクティス積んだ世代に訪れる歓喜のショー。正気の時間はみじん切りになって視覚は線から点になって変化する風景は灰になってからのカラー、オラの周りのみのカラー、空っぽだからこれしかねえんだ。やるしかねえんだ。オラがオラであるために。めっちゃ便利だなや。」
といった感じでまるでJ-RAPみたいな感想を抱くということで、でもそれが素敵で仕方なくて、それでも進んでいくオラの野望、願望、双方に此処に刻む最高の財宝と混沌の昏倒、オラらのマイク騒ぐまたぐボーダー越える未だ見ぬ地へ。