殿が叫んでいる

 

何がムカつくって、かのポンコツ家臣のオッペケ発言だそうです。

其奴は殿がルンルン気分で彼方此方をウロウロするという我々家臣からすれば無駄な時間、しかし殿にとっては大切な時間、プレシャスタイムを害したそうで、我々家臣は殿がルンルン気分で居られることこそ天下泰平の本質と考えていますのでそんな殿のルンルン気分を害した不逞の輩ポンコツ家臣が如何なる狼藉をやらかしたのか殿に聞きに行きました。

でも私一人ではちょっと怖いし、何せ気難しい時はマジで気難しい、そんなギャルっぽい所も持ち合わせた我等が殿ですから、私が不逞の輩について訊ねるともしかしたら、

 

「お前よぉ、なんでそれ、その嫌な思い出をよぉ、わざわざ思い出させるわけ?別にそこまで怒ってないし、ちょっと今朝ウロウロしてたらこんなムカつくことがありましたわ。みたいな感じで爺に話しただけですやん。フランクなトーンで。スローなディスタンスで。それをね、そんな風にワチャラワチャラと取り立てて大ごとにされても俺としても予想外の話の盛り上がりにビックリするだけだし、そしてアレよね、お前はそうやって「我が殿をムカつかせやがって。然るべき処罰を!」みたいな感じで俺への忠義に燃えている感じを出してるけどそれは実は俺のためでもなんでもなくてお前自身の手柄のためなんでしょ?殿!ご照覧下さい殿!私めはこんなにも、殿のちょっとした朝の珍事にもビビッドに反応して、ごっつ忠義に厚いでしょ?それを覚えておいてください。ってか?だからこんな小さな火種をさも大火のように扱うわけでしょ?なんかその俺はもともとボンボンの出だから、産まれた時から殿になる事が約束されてたタイプだから割とヘラヘラと生きてきてるからかもしれないけど、そういうお前みたいな立身出世への野望がハンパないタイプに対して若干引いてしまうというか、いや、頑張ってくれてるのは分かるんですけど、なんというか、そのオフェンシブさってのをあまり表に出すのは如何なものかと思うんですよね。正味ね。だから何て言うのかな、こういった煩わしい時間、俺がかくも思案する時間を作ったお前はどう?いっとく?切腹いっとく?マジで。涅槃で待っとく?おーい、切腹の段取りしといてくれー。」

 

といった感じで突如切腹を命じられる可能性が無いわけで無く、しかしまだまだ全然死にたく無い私は稲妻のようにキレる頭でこの難局、国難をどう乗り越えるべきか暫し思案したところ、稲妻のようにナイスなアイデアがすぐにポナンッと出でてきました。

それは、殿に訊くのが怖いなら、そのポンコツ家臣に直接訊けば良いじゃん。という誰でも考えつきそなアイデアです。

善は急げと早速お昼寝中のそのポンコツ家臣を叩き起こして今朝、殿をムカつかせたことについて訊ねてみました。

 

「え?今朝ですか?今朝はね、殿が彼方此方をウロウロしているところに偶然にも遭遇しましたので、小生、目が覚めると股間の茂みが若干濡れておりましたゆえ、ごく少量の寝小便をした可能性がございます。本来ならば寝小便とは決壊したダムが如く、一回分の小便の全てが出切ってしまうものですが、しかし小生は家臣である故、寝ても覚めても気を張っているので、ごく少量の小便しか漏らさず、茂みを若干濡らす程度の被害に抑えまして候。といったことを報告したぐらいで、特にムカつかれるようなことは申してないと思いますけど。」

 

それを聞いて私はピンときました。殿はおそらくこのポンコツ家臣が寝小便で濡らした陰毛のことを"茂み"と呼んだことに腹を立てておられる。

 

陰毛のことを"茂み"と呼んで良いのは女性の場合のみと相場が決まっている。それをば此奴はわざわざ殿に向かって、しかも殿が大切にしている朝の習慣の最中に言いやがったのだ。それで殿はムカついておられたのか。なるほどね。こうして一個一個トラブルの原因を突き止めてしっかりとケアしていくことが政には大事なんですよ。それはどんな小さいことでもそうなのです。特に殿のように気難しいタイプなら尚更のことね。まあ祭り事をやってるとね、色々ありますよ。