
同じ太陽系に住まうものとして、この太陽系には他にどんな惑星があるかということを僕たちは覚えておかないといけないよね。
僕たちが生命を謳歌しているこの惑星の名は?そう、地球です。アース。
ならば、太陽から4番目に離れている惑星は?そう、火星です。マーズ。
あなたは「太陽から4番目に離れている惑星」と聞かれて、まさかとは思いますが、
「水金地火木土天冥海だから4番目は水、金、地……火星や!」
とでも考えたのではないでしょうね。もしそうして考えたのだとしたら、それはあなたの勝手ですし、正直なところ僕ぐらいになってもついついそうして数えて惑星のポジションを理解したりしておりますが、やはり僕がいつまで経っても愛して止まないのがこの水金地火木土天冥海の、土天、のパートでございます。
すいきん、と流れるようなコンビネーションで掴み、ちかもく、と小気味よいリズムが宇宙への焦がれを更に加速させたかと思うと突如、どってん、と僕らの宇宙船が墜落するかの如き鈍臭い響きが襲いかかり、宇宙へと飛んで行った意識が急に田園風景へと引き摺り戻され、目の前には牛が現れます。
水金地火木のラストを飾るのは、めいかい、ですが、これは同音異字の熟語、明快、を思わせ、めいかい、だけなら如何にも宇宙が明快に知れた感じがして良い締めとなるはずなのですが、直前に、どってん、があるせいで「クイズどってん明快!」みたいな、西郷隆盛みたいなオジサンが司会を務めるクイズ番組のタイトルみたくなってしまっております。
僕はこの、どってん、が愛しくて仕方がない。
パリッとしたパンツスーツで決めたキャリアウーマンが大好物のアポロチョコを食べようとして手を滑らせてオフィスにアポロチョコをぶちまけて赤面しているような、筋肉ムキムキの青年がナメクジを見て「キャイッ!」と叫んだっきりその日は屁ぇばっかりこいて使い物にならなくなるような、そんな可愛げのある可笑しみがこの、どってん、という響きには含まれていると思う。
どってん、のおかげで想像出来ないほど大きなこの宇宙(しかも太陽系だけで)が少し身近に感じる気がしてならないんです。
なあーんだ、宇宙にも意外とドジなとこあるじゃん!と、宇宙がなにかとても可愛く思えてくるんです。1つ上の先輩みたいな、先輩だけどちょっとアップかまし気味のイジリ方をしてもOKな間柄というか、ツッコミの時は「なんでやねん!ちゃうわ(笑)。」とタメ口をきいても大丈夫というか、頼れるし尊敬もしてるけど可愛いとも思えるところもある。そういう先輩がつるんでて一番楽しいんですけど、どってん、のおかげで宇宙もそんな先輩みたいにフランクに接していいような気すらしてきます。
とはいえ、道端で宇宙に会ったとして「宇宙おっす!この外道、お前まだ生きとったんかコラ。ど突いたるさかいコッチャ来いや。」みたいな失礼な態度はさすがにこれはとれないですし、もし僕の後輩が宇宙に対してそんな態度をとってたら僕がキレると思います。それはマジでいったりますわ。後輩が失礼なことをしてたら、先輩がそれを正す。それって当たり前のことですもの。僕らの時代、鉄拳制裁なんて日常茶飯事でしたからね。これホンマの話ですよ。
「宇宙さん!チーッス!今日も、どってん、頑張りましょうや!さっきも宇宙さんの話しててめっちゃ盛り上がってたんですよ!え?いや悪口じゃないっすよ(笑)!褒めてましたよ。リスペクトしてましたよ!マジっすから!なんなんすかその疑い(笑)」
せいぜいこんな感じですよね。いくら、どってん、のおかげで親しくさせてもらえるとは言え、親しき仲にも礼儀ありですし、そこを宇宙の器が大き過ぎるが故に「あ、宇宙ってこんな感じでイジっていいんだ。しょーもない空間、とか言っていいんだ。」みたいに勘違いしてしまう輩もいるにはいますからね。そこを分かってるか分かってないかで先輩に気に入られるかどうかが随分と変わってきますのでね。結局自分が損することになるから。
ただアレですよ。
どってん、なら全然OKですが、どてん、これはいけない。
どてん、と読んでしまうセンスはもはや最低と言う他なく、たとえば、優しい優しいクリームケーキ先生がサウナから出た後に掛け湯をせずに水風呂に入るような、優しい優しいクリームケーキ先生が実はオレオレ詐欺を最初に考えた人だったような、これまで好印象を持って接していた人が実は泣く子も黙る極悪人であったような、そんな最低最悪な響きがこの、どてん、からはするのであり、もし、どてん、という読み方こそがスタンダードである世の中なら僕は宇宙に対してなんの親近感も湧かなかっただろうし、なんなら宇宙ってダサいな、やる気ないな、くらいに思ってしまっていたかもしれない。
ほんの些細な違いであるが、どってん、と、どてん、は全く別物と言い切ってよく、僕はこれからも、どってん、と読んでいく所存ではありますが、どてん、派も決して少なくなく、やはり浮世には不粋な者がまだまだ多いということを改めて感じさせられましたよね。