これぞ我らの最長不倒

 

驚かないで欲しいのは、造反有理、一寸の虫にも五分の魂、窮鼠猫を噛む、といいますか、それは糺ノ森の御手洗団子、アメリカ大使館のダブルスパイ、ポン酢の利便性といったところでございまして、我々の目指すところはその最長不倒、エンゲル係数、ニコ・ロズベルグ閣下のご乱心でございます。

 

なにをおっしゃっとんのなこのダボチンはと思った貴方は三下以下のテーブル乞食の勃起したところで8cmという取るに足らないハッピーチャレンジャーとしてこれを唾棄し罵るしか無いのですが、世の中には不思議なもので、この"罵られる"という行為によって性的な興奮を覚え、勃起して8cmになるという我らの理解の範疇を超えた、と言おうと思いましたが考えてみれば我らとて美人で高慢ちきで居丈高、武士は食わねど高楊枝みたいな不遜な態度の女性に、アホ、バカ、等の軽めの暴言を吐かれることによって、まぁ性的興奮とまではいかなくとも、少しく涅槃、小さじ半分のニルヴァーナを感じる瞬間が完全に無いと言えばそれは嘘になる為、確かに或る人にとっては"罵られる"というのは最上の悦び、至上の快感となり得るものであってもこれはおかしいことではないなと考えを改めたところで我らはまた最長不倒へと一歩歩みを進めた次第でございまして。

 

そうなるとこの湯豆腐を丸飲みするという一連の行為もあながちあながっちではないのかなという感想を持ってしまうのが人の情け、ヒモの哀しみ、縦の糸はあなた横の横チン横丁は私、なんて思うのであるが、しかし問題なのはこのショップの最大の売りである海猫のマスティーユという料理で、なんと言いますか、この料理というのが幾ら何でも、幾ら食物連鎖の殿堂入りを果たしている我ら人間サピエンスとはいえ、あまりにも食べ物となってくれている生き物に対して誠意が無さすぎる、命の尊厳を蹂躙しすぎている、というのが率直な感想でして、これはフォアグラにも言えることなのですが、それ故に我らは提供された湯豆腐を手づかみからの丸飲み。して給仕であるピエトロドレッシングのパッケージのオジサンを養豚場で太らせた後に天保山の頂上から200回くらい転がり落としたら人相があの頃のお前らと変わってもうたみたいな男性を呼びつけ「美味かったよ。湯豆腐の最長不倒ここにあり。京都の絹ごし豆腐やね。菖蒲谷の近くの。それはそうと我らの最長不倒まで残すところは、ってそれをこんな極悪リストランテの給仕である貴様に告げる必要は無いよね。店名はなんだっけ?極悪リストランテ・ソドムだっけ?巨魁喫茶ゴモラだっけ?まあなんでもええからこの店で一番偉いシェフ呼んでこいや。」とシェフをテーブルに来させるよう命じた。

 

暫時待たされて「給仕の言い方からして、なんかクレームをつけられそうな感じだけどそれに対する鬱陶しい感じを出してしまうと、こういう輩は此方側のそういったバイブスに敏感なのですぐさこれを察知し余計に火に油を入れることになる為努めて平静を装ってはいるが、普通こういったシェフをテーブルに呼びつける場合はそのほとんどが料理を褒める為にということが多いのでそのことに対する期待感、誇らしさ、粋でいなせな感じも出しておかないとこれもおかしなことになるし、なんならそのお褒めにあずかれるという嬉しさからくるイノセントな微笑みなんかもたたえておいたほうが客も「あら、クレームをつけようと思ったのに思いの外イノセントな笑みで、好青年な微笑みやね。やれやれ、ここはひとつ矛を収めることとするか。」てな感じで怒りを鎮めてくれる可能性もあるので微笑みはゴーとして、しかしこのシェフにクレームをつけて逆恨みされた場合の逆襲が怖いな、といったサイコ感、強者感もほんのり出しておいて損はないだろう。なぜなら、ビコウズ、所詮この世は弱肉強食、いつでもやったんぞ的な感じを漂わせておくのも得策だよね。」みたいな感じでシェフが我らのテーブルに向かって先ほどの給仕と共に歩ってこられた。

 

シェフがそんな態度で自己紹介をした。

「こんばんわムッシュ。私がシェフの諸見里剣介でございます。剣介の剣はつるぎの剣です。で、なんでございますか?」

なにが剣はつるぎの剣じゃアホタレ。そんなことでは全然怖がらない我らぞ。最長不倒ぞ。

「あのですね、おたくの作る海猫のマスティーユなんですがね。なんかすごくおいしいらしいですよね。」

「ええ、当店の海猫のマスティーユは、まあ、あまり大きな声では言えないのですが、なんつーか、私自身もちょっと引くくらいの非道な感じで、実の親に外道と罵られても仕方のない感じで海猫をマスティーユにしたものでございまして、当店でも指折りの自信まんまんの逸品でございます。というのも、この海猫という生き物はですね、どういった由来か、苦しめば苦しむほど肉が旨くなると、とある下賤な民族の間では信じられておりまして、当店でもその都市伝説みたいなやつを信じまして、なにせ先代から私に至るまでアホしかおりませんもので。つーことで捕らえたての海猫をまずは生きたまま」

「ああハイハイ。まあそれはええねんけど、シェフ諸見里、貴公の顔面に死相がありありと浮かんでおりますが、大丈夫ですか?」

 

「は?死相?」

それがシェフ諸見里の今際の際の言葉となった。

我らは懐に忍ばせておいた、香港から密輸したばかりのコルト・ガバメントを素早くスーツの下のガンホルダーから取り出してシェフ諸見里の眉間へと銃口を向け、その引き金を引いた。

 

 

これも我らが最長不倒に至るまでの道程のひとつ、カムチャッカ半島の天気雨、皇居ランナーの下心、有名無実の有言実行、ナスのアンダルシアのおナス、ってな感じでほんならお前らよ、小さく前にならえ!みたいなポーズのまま最短距離で食物繊維を摂取するとして、それが本当の意味での幸せかよ(泣き)、泣けてくるんだよな、こんな夜更けにウンコをするユニットバスの中、冷たい小売店のギャル店員、明け方から試す四十八手、隣人がマリファナを試している。我らは未だ、至れずにいる。