
みなさんは、浜友(はまゆう)という言葉を知っておられるだろうか。
浜友とは夏休みの帰省時、親戚の家に泊まっている間だけ友達になる友達のことで、多くの場合親戚の家の近所に住む地元の子供であるが、場合によっては時を同じくしてその土地に帰省している同い年くらいの子供であることもある。
浜友は親戚の子供とは違い、親戚縁者の集まりなどでは顔を合わさないため、その繋がりはかなり希薄なものである。
今年は会えても次の夏には会えないかもしれぬ。帰省の時期がズレたり、地元で札付きのワルになっていたり、ちん毛がチョロと生えて次のステージに行っていたり、と、移ろいやすい少年期から青年期での友情である故ほんの少しのズレでその関係は廃れてしまうのである。
そんな刹那的な友情であるからこそ、浜友とともにブイまで泳いだ海、浜友に虫の捕り方を教えてもらった山、庭でやった浜友の家族との合同バーベキュー、最後の夜に浜友とした花火、それらの思い出がずっと心の奥深くに残り輝き続けるのである。
浜友。
あなたにもそう呼べる友達がきっといたはずだ。
そしてそんなあなたも、誰かにとっての浜友であるかもしれない。
浜友。
たったひと夏だけの友達、浜友。
浜友とはもしかしたら、茹だるような暑さが少年に見せた陽炎なのかもしれないー。
浜友。
それは俺が考えた単語。
遠い夏を想い、面影と水平線を瞼の裏に映し出す。浜友のあの屈託のない笑顔。瓶の牛乳のキャップの開け方を教えてくれた夏の日。
浜友。
嗚呼、浜友。