tide

 

また風向きが変わって、形成が一気に逆転しこちらが絶対的有利になったとしても、私はあなたのことを、今までと同じように想い続けるだろう。

なぜならそれは私が、人間としてまだ生きていきたいと思っているゆえ。

なぜならそれは私が、心に柔らかな毛を生やし(びっしり)、そこに蹴爪を隠す優しき獣ゆえ。

 

失くした誇りを取り戻せたとして、あなたはまた前のように、居丈高のどうしようもないアホになってしまうのかしら。

私から見ればあの頃のあなたは、暗い海にたった一隻彷徨う船のようだった。そう、海賊船のようだった。

ひとりぼっちになって、あなたにとっての灯台は見つかったかしら。明るい港町は見つかったかしら。そしてその港町を侵略して縄張りにして、海賊は好き放題だから。

 

あなたが私に残してくれたものの中で、私のなかで今も輝いている(still shining)なものはなんだろうと考える。

今も輝いているもの。

それはたぶん、まだ若かった私にあなたが教えてくれた「こだわりとエゴは違う。遊びと遊び心は違う。」という考え方だと思う。

といってもあなたが私に対して直接そういったことを説いてくれたワケではなく、あなたを見ていてそう感じることができただけ。時折バツグンのダサさと迷惑さを発揮するあなたを見て、あなたを反面教師として私が私自身で学んだだけ。

 

こうして時々あなたとの思い出に寄りかかることだけが、今の私とあなたの、私の一方通行なつながりで、それが愛しくもあり、淋しくもある。あなたも私のことを、時々思い出したりするのかしら。

どちらでも構わないけどただ一つ、これだけは間違いなくそうなのだけど、私がまだ青かった時代の絶頂にあなたがいた。あなたと一緒にいた。

 

そして一緒にいなくなって、今に至る。

 

私がこのまま順調にいって、人々からリスペクトされて、しかし決して居丈高にならず、丈夫ナ体ヲ持チ、迷える者には道の光を、迷ってない者には「大丈夫、迷ってないっすよ。」と暖かな言葉を、時には冗談を言い、イケる!と思ったタイミングでは下ネタも挟み、ラーメンは月一に抑え、節制具合を人々からリスペクトされて、欲に絡め取られることなく、体感としてはそんなに花粉が飛んでない春に、かつてあなたと過ごした街を訪れてみようと思う。

 

 

あなたが私のパスケースの裏に勝手に貼ったオリジナルシールは、ところどころ剥がれながらも、まだしぶとく貼り付いているのよ。