ハゲ・ダイバーシティ

 

君たちはまだ、本当のダイバーシティを知らない。絶対に知らない。

なぜなら君たちの中に一人でもハゲ・ダイバーシティを知っているヤツがいるだろうか。いや、いない。絶対にいない。

なぜならハゲ・ダイバーシティを知っている人間はハゲ・ダイバーシティみたいな人間になっていく、なれていく、からだ。

 

君たちは、悪い意味で男なのか女なのかわからない人を見た夜もあるだろうし、昼もあるだろう。悪い意味で男なのか女の子なのかわからない人。それは砂漠のなかに一本だけ芽を吹いた大麻草に近い、強くストロングなライフスタイルの人。

そういったストロングな人が日々の生活の中で何度も巡り会う小さな悲しみや小さな喜びの一つ一つが、そのすべてが、ハゲ・ダイバーシティへと繋がってゆく。

 

君たちは、怒るとすぐに「私のことバカにしてる。」と言う人を見た夏もあるだろうし、冬もあるだろう。怒るとすぐに「私のことバカにしてる。」と言う人。それは本人になんとなく自覚があるとおり、本当にバカにされている場合が多いのと同じで、同じです。そういったバカにされている人が時折意外な特技を発揮して周囲の人から少し見直される瞬間こそが、その輝きが、ハゲ・ダイバーシティへと繋がってゆく。

 

君たちは、あまりにもつまらなさそうに仕事をしている路線バスの運転手さんのアナウンスが、本当の本当に何を言っているか一切聞き取れなかった午前もあるだろうし、午後もあるだろう。路線バスの運転手さんのアナウンスが、本当の本当に何を言っているか一切聞き取れなかった。それはマスクをしているはマイクは近いわボソボソ喋るわで、基本的に乗客に何かを伝えようという気が一切ないし、たしかにハキハキと喋ったところで乗客もほとんど聞いていない。そういう運転手さんは観光で初めてその土地を訪れた者に対して不親切すぎるし、わかった、そっちの出方がそうなら、こっちは液晶の表示と機械音声のアナウンスだけを頼りにこのアナルシティをサーフィンし切ってやろうと意地を張るだろう。その若い意地こそが、そのテンションが、ハゲ・ダイバーシティへと繋がってゆく。

 

そう。私たちが生きるこの世界には、実はハゲ・ダイバーシティの火種が、糸口がアホほど多く存在しているのである。

天上の輝きが身近にあって、このままのうのうとスルーしているだけでいいのだろうか。仲間内で話している時、誰かがちょっとウケる話をすると、それに乗っかって自分もちょっと笑いをとれたことに調子づいて、周りはとっくに飽きているが場を冷めさせないために愛想笑いしているということも分からず延々とその話を引っ張るヤツを、このままのうのうとスルーしているだけでいいのだろうか。

年金はたぶん貰えないということを、このままスルーしているだけでいいのだろうか。

否。否ってゆーか嫌。

断じて嫌である。

 

ならば君がもし今度ハゲ・ダイバーシティへの糸口を見つけた時に起こすべき行動はなんだ。もうお分かりだろう。

そう、トライするしかないでしょう。

トライすることのすべてが、ハゲ・ダイバーシティへと繋がってゆく。

恐れることなど何もない。

 

トライした君を待っているのは、ただただ天上の輝きのみなのだから。