ウィー アー ノン リスペクト(される側として)

 

自慢ではないが、僕たちほど誰からも尊敬されていない人間はこの世にはいない。だろう。

僕たちはただの一人からも尊敬されることなく、人生という名の大海原を薄ら漂っている。

 

もしかしたら僕たちの知らないところで密かに、実は僕たちのことを尊敬しているんですと言ってくれている方もいらっしゃるかもしれないが、それならそれで直接言って欲しい。

やっぱ多少恥ずかしくても大事なことって直接言った方がいいと思う。それに、僕たちを尊敬してくれているということは、僕たちにとって初の出来事、喜びの出来事なので僕たちも嬉しいし、そういった方とはこれからもお互い良い関係を続けていきたいと思える。

なのでもし僕たちのことを尊敬してるとあれば、遠慮なく言っていただきたい次第である。

 

ただ、密かに尊敬されている可能性もほとんどゼロに近い。

なぜなら僕たちは前面に「僕たちを尊敬してるヤツを見つけ次第殺す」とプリントされたシャツを常に着て歩いているし、その背面には「僕たちを密かに尊敬してるヤツを見つけたらご一報を 謝礼有り〼」とまで丁寧にプリントしている為、そんな物騒なシャツを着てる僕たちのことを侮蔑こそすれ、よもや尊敬したりはしないだろう。

 

3年ほど前、ハマの横浜辺りに僕たちを尊敬しているヤツがいるというありがたいリークを得たので、真相を確かめようとその疑惑の人物に興信所を張り付かせて僕たちのことを尊敬しているかどうか徹底的に調べたことがある。

しかし、結局その人物は僕たちのことなど1ミリも尊敬しておらず、なんなら僕たちのことをモノホンのアホと呼んで嘲っているらしいということがわかった。高い金を払って興信所まで雇ったのに結局尊敬されていないとは、僕たちはどこまで人から見下されているのだろう。蹴っ飛ばされるのだろう。

 

そうして尊敬されていない日々を嘆いているとたまにアドバイスを受けることがあるのだが、その多くが「そんなに尊敬されたいのならお互いにお互いを尊敬し合えばいかがか。」というもので、これは身も蓋もない、何もわかっていない珍回答であり、いいですか、尊敬というのはその人の中に自然に生まれるエモーションであって、誰からも尊敬されていないからといってそれならお互いにお互いを尊敬し合いましょうと言って尊敬し始めたされ始めたところでひとつもエモーショナルじゃないでしょ。手負いの獣同士が傷を舐め合ったところで、エサは手に入らんたい。ということを滔々と説明して差し上げるのだが、大抵の人は最後まで聞かずに途中で帰ったり、最後まで聞いても「このアホは何を言うとんねん。」という表情をして去っていくところを見ると、嗚呼、やはり僕たちは誰からも尊敬されていないと改めて感じるばかりなのだ。

 

でも僕たちは信じてる。

いつか心の底から僕たちのことを尊敬してくれる人間が現るることを。

蓼食う虫も好き好きって言葉もあるじゃないか。僕たちはたしかに蓼かもしれない。しかしそんな蓼な僕たちを喰らう虫も、この地球上のどこかに必ずいるはずだ。

 

僕たちは誰かから尊敬された時初めて、誰かを尊敬するだろう