別れ際、くったようなこと言うこと

 

海外のガムってすぐ味が無くなるよね。無くなるんだよね。そう言い残して二度とは部屋に戻らなかった彼女のことを久しぶりに思い出したのは、今しがた出てきた焼肉屋が会計が済んだ後に見慣れない海外のガム、ミント味のガムをくれたからである。

 

おまえらみたいなもんは焼肉を好きなだけ食ったせいで口がクッサなので、僕の可愛い愛犬チャッピーがクサさでクサ死んでしまいますので、是非この聞いたこともないメーカーのミントガムでも噛んでお口をスッキリさせてから余生を過ごしてください。そしてもう二度とウチみたいな、どこの肉かわからんような肉を提供している店には来ないように。保健所が来たら一発でアウトもらえる自信ありますよ。店長とよう笑ろてますわ。ということでサイナラ。おおきにね。

というサービス精神で焼肉屋では会計を済ませた後にガムをくれることが多いね。それも謎のメーカー、聞いたこともないメーカーのガムだね。

確かに海外のガムってすぐに味がなくなるよね。1分待つか持たんかだよね。それだけ言い残して去年の冬、僕から離れていった彼女。

 

いまになってみると、彼女の言い残した言葉の意味がなんとなくわかる。そう、これは喩えだ。比喩だ。比喩や!

僕と付き合い始めた当初は日々に彩りがあり、明るい前途を夢想していましたが、そんな薔薇色の日々は一瞬にして過ぎ去り、待っていたのは面白味の無くなった惰性のみの関係。そんな僕との関係を比喩して、''海外のガムってすぐに味が無くなるよね''と言い残して行ってしまったのだろう。

 

だが、待ってくれ。海外のガムを例えに出すのなら、それが有効なのは相手もしくは自分のどちらかが外国人の場合だけではないのか。僕は外国人ではないぞ。彼女も。

そうなると、なんかアレちゃいますか。ええ女風の捨て台詞と共にひとつの恋を終わらせてみました、みたいな。次の恋はステキな大人の恋にいたします、みたいな。なんかそうゆうドラマの中のようなことを言うことによって今日はなんだかいつもの街が寂しげ。それは私がひとりになったからなのね。みたいな感傷に浸って気持ちぃくなってるだけではないのか。

絶対そうだ。アイツそういうとこあったもんな。なんか名言残したがりみたいなとこ。わかるわかる、だって俺もそうだもの。俺も名言残したがりだもの。そして気に入った名言を筆で書いて額装して家の一番目立つとこに飾っとかはったらどうです?いります?

 

かくして僕との日々を海外のガムに例えた彼女は、実は別れ際に盛大にスベっていたということが明らかになりましたので、僕はそんなスベってる彼女と別れることができたのはむしろラッキー。いや、ラッキーを通り越してラッキョイとしか言いようがないと思えました。スベってる女と別れられてラッキョイ。フっちゃうとこっちが悪いみたいになるからそれも含めてラッキョイ。

 

スベってるといえば、ステッカー屋で売ってるステッカーって全体的にうっすらスベってるの多くないですか?なんか決まりでもあるんですかね。ステッカー上にあんまり面白いことを書いたらダメとする、みたいな。それはないか。