オッサンの下ネタの滅ぼし方

 

「急いては事を子孫汁。」という言葉をご存知でしょうか。

慎重にいけ。決して焦るな。ホシの予想は付いてるんだ。ということわざみたいな、なんていうか、よくオッサンとかが言う定型文みたいなやつです。

 

''子孫汁''というワードからわかるとおり、これは下ネタです。

美は細部に宿る、みたいに下ネタを細部に宿らせるオッサンという生き物だけあって、偉そうにこんな教訓めいたことを言う割にはやっぱり下ネタを挟むというのは、下品を通り越してもはや蛮勇と言って差し支えないでしょう。オッサンというのは、うら若き女性とお話ししている時でも、3分に一回は下ネタを挟まないと窒息死してしまうということが報告されているぐらいですから、こうして随所に下ネタを挟まないと生きていけないのですよ。もう死ねばええのにと思いますけど。

 

そんなただただ悲しい生き物である、若者からも誰からも忌み嫌わる存在であるオッサンですが、そんな下品で下劣なオッサンとはいえ、さすがに下ネタを挟んでこない時があります。それは、オッサンが泣いている時です。

 

泣いているとなると、何事も下品下劣な例えに置き換えるオッサンとはいえ、さすがにその感性が若干鈍るようで、泣きながら「うぇーん(泣き)。蜘蛛の巣とったろか。うぇーん(泣き)。」とほざいている中高年はさすがに見たことがありませんよね。

もし万が一泣きながらも下品下劣を貫いているオッサンがいるとしたら、それはもう治ることの無いドタマの病気なので、然るべき施設にぶち込むなり、それが面倒だったら最悪チャイしてしまっても誰も咎めることは無いので安心してください。私も世間も司法も、あなたの味方です。

 

話が若干逸れました。泣いてるオッサンを虐める方法でしたよね。

 

まず上記のとおりよほどのことが無いかぎり、オッサンは泣いてる時には下ネタを言わないのですが、またこれが迷惑な話で、オッサンは自分が泣いてる時に下ネタを聞かされるのが大嫌いなのです。試しに泣いてるオッサン(泣かしてもいい)の耳元で下ネタを囁いてみてください。それは普段のオッサンのように品性下劣でどうしようもない下ネタが良いでしょう。するとナーバスな情緒に突如差し込まれた下ネタに憤怒したオッサンは、あなたに蹴りを入れてきます。ウザいですよね。でも何度も言う通り、ピンチはチャンスのスンチャッチャ、住めば都の大三元。何言うとんねんおまえ。ということでオッサンに入れられるベクして入れられた蹴り、からの大逆転についてご説明いたしましょう。

 

まず泣いてる時に下ネタを囁かれたオッサンは蹴り(ミドル)を入れてくるというのはご承知のとおりなのですが、問題はその蹴り前のプレパレーション、そう、予備動作なのです。

オッサンはあなたに囁かれた下ネタを聞いて蹴りを入れてくるのですが、その蹴りを入れる前に必ずあなたの瞳をグッと睨みます。その睨みからひと間あってから蹴りがくるのです。

となるとこちらが仕掛けることはひとつに絞られますね。そう、オッサンがあなたの瞳をグッと睨んできた刹那、蹴りに合わせて全身に力を入れて、足の裏を地球に貼り付けるかの如く踏ん張りましょう。

するとどうでしょう。オッサンみたいなもんは体の軸がブレブレなので、蹴りを入れたはいいが、あなたの踏ん張りに体が負けてよろけてしまいます。やったぜ。

そしたらオッサンの汚い後頭部を鎌をかけるように腕でグンと掴み引き寄せ、その勢いのままオッサンの顔面に膝蹴りをお見舞いしてはどうでしょう。

普通に生活をしていれば、顔面に膝蹴りを入れられるなんてバイオレンスにはなかなか巡り会えないものですが、そこは時と場所を問わず下ネタを挟み続けていたオッサンの人生の報い。あなたの遠慮のない膝蹴りにオッサンは驚きと痛みで再度泣きます。

 

泣いてるということは?そう、またもオッサンの耳元で下ネタを囁きましょう。するとオッサンは大方の予想どおり再び憤怒しあなたに蹴りを入れてきます。そしたら頃合いを見計らってまた踏ん張ってよろけたオッサンの後頭部に鎌をかけるように腕をまわし引き寄せて、あとは上記のとおりです。

 

そこから先は、あなたの膝小僧かオッサンか、どちらが先に壊れるかの根比べですが、だいたい上記の一連を4、5回も繰り返せばオッサンはほとんど動かなくなりますので、そうなれば一旦帰ってもらって構いません。あとは私たちでなんとかしますので。

 

次の朝あなたの姿を認めた時、オッサンは怯えた瞳であなたを見ることでしょう。それは初めて家に迎え入れられた仔犬のような。

しばらく遠巻きに観察していると、あなたは気付くでしょう。

 

あれ?オッサン、今日ひとつも下ネタ言うてないな。

 

そう、オッサンは昨晩の出来事のあまりの恐怖に''下ネタ囁かれ=顔面膝蹴り''ということをインプリンティングされてしまい、大好物の下ネタを自らの口からも発することが出来なくなっていたのです。

嘘だと思うなら昼を過ぎた頃、オッサンの耳元で昨晩のように下ネタを囁いてみてください。

きっとオッサンは、短い悲鳴をあげたあと、汚い顔面を両の腕で覆う防御の姿勢をとるはずです。ほら、オッサンの中に確かな防衛本能が芽生えました。

 

 

こうしてまた一人、下ネタを一切口にしないクリーンなオッサンが世に誕生したわけです。オッサンの進化です。これを祝わずしてどうしましょう。生まれ変わったオッサンの素晴らしき前途を祝して、なにか小さな宴でも開いてみてはどうでしょうか。