
大ピンチであった。宇宙怪人ザザムンガにこの宇宙戦艦ニューダーリンを襲われて小一時間、いよいよ撃沈させられる感じが本格的に出てきた。この艦の艦長である三木は決断を迫られていた。
「艦長、このままでは艦は沈み、乗組員が宇宙の塵と化してしまいます。最終武器のスタンバイ指令を!」
「艦長、もうすぐ解析班がザザムンガの、ここを攻撃されたら無理です、死にます、という弱点を解析できそうなんです。最終武器の使用はこちらにもかなりリスクがあります。解析班を信じてもう少し耐えましょう。」
うるせぇ。しかし確かにこのままでは、艦はあと10分もすれば沈んでしまうよね。てことは共に宇宙を冒険してきたこの艦の乗組員達、もちろん私もですけど、みな死んでしまいますね。それってすごく悲しみのこと。なのでザザムンガごときなら簡単に吹き飛ばせるであろう最終武器のスタンバイをしておいて、もしもの時には発射してしまおう、と。わかる。気持ちはすごいわかる。しかしもう一人の人が言っていたとおり、最終武器の使用はこちらにもかなりのリスクがあることは、もうあなたもご存知だと思います。それはどういったリスクかというと、最終武器の破壊力たるや凄まじく、発射した反動で艦にもかなりの負荷がかかり、もちろんそれは艦内にいる乗組員の方々にも同様に負荷がかかってしまうので場合によっては発射した瞬間に乗組員もちょっと死んでしまう、ぐらいのことになるんですよ。
40年前、たった一度だけ最終武器を使用した時、艦内にいる五割の乗組員が死傷を負ったといいますから。
40年前でそれやったら、技術の進歩で今はもっと負荷を抑えられるのではないのですか?とあなたは思うでしょう。しかしそれは夢物語なんです。
なぜなら最終武器はあまりに強力すぎて実地試験を行うのが難しく、確かに艦自体の強度は確かに上がっているのですが、艦の形状や構造がごっつ変わってしまった今、最終武器の使用による負荷がどの程度のものなのか、マシにはなっているのか、それとも、もっとえげつないことになっているのかは誰にもわかっていないのです。
じゃあ解析班の解析力を信じてザザムンガの、やめて、ここだけは攻撃せんといて、死にますので、みたいな弱点が解析されるまで待つのか。いやいや、それはそれでリスクがありますよね。だって艦はあと10分もすれば撃沈してしまうじゃん。10分以内で必ずザザムンガの弱点の解析が終わるのならいいけど、それはやっぱなんとも言えないんでしょ?例えばザザムンガが静止していて、それを解析するならまだしも、多少傷を負ってはいても、まだまだザザムンガは元気いっぱいでこの広い宇宙を動き回ってますもんね。そんな元気印のザザムンガの弱点の解析って言われても、それがどれだけ時間がかかることなのかは、ちょっと掴めない、みたいなところかと思います。
だので結局、どの作戦でいくのか、それを早く判断しないといけないというのが艦長である私こと三木の役目なんですね。これは悩みますよね。一旦地球に帰らせてほしいですもの。僕たちの地球に。
といった風に三木は判断しかねている午前2時。もちろん宇宙時間での午前2時。