頭をコチン!

 

私が自由になったのは、あの頃、あの頭をコチン!としてしまった頃からです。甘いやつ。コチンの甘いやつです。

 

コチンしてからというもの私は、ってゆーか僕は、フリーダムを履き違え、毎日が毎日、気に入った言葉や楽曲の一節を繰り返し何度も言う、さっきまで黙っていたと思ったら急に大声を出す、人混みのなかでいきなりダッシュしだす、バスにタダで乗ろうとするなど、世間にはなかなか理解されない、ともすれば奇行ととられかねないような行動を行っております。

 

ママはそんな俺に言いました。

 

「貴様、この世の理を得よ。って言うてこれはどういう意味かと言うと、これは貴様がいま持っているその食べかけのパンを仕舞っておくためのケースをまず置け。置いて私の話を聞け。普通、人の、それも貴様をこの世に産み落とした母たる私の話を聞くのにもかかわらず、なのに貴様は食べかけのパンを仕舞っておくためのケースをその小さな両腕に抱えたまま。いや実際は小さくないんやけど、なぜなら貴様は今年もう34歳にもなる大人のおっさんであるからで、そんなおっさんが件の食べかけのパンを仕舞っておくためのケースを持っていたところでそんな”小さな両腕に抱えたまま”なんて幼子の如き可愛らしさは皆無なのであるが、やはり親からすれば子供はいくつになっても子供、お腹を痛めて産んだ貴様は私からすればいつまでも可愛い子供なのだ。しかし最近の貴様ときたらどうだ。上に書かれているように奇行の限りを尽くしている。それは一体なにがキッカケでそんなことになってしまったの?あれか。あの学習机と一緒に買い与えたキャスター付きの座面がクルクルっと回る椅子に腰掛けた貴様を、貴様の同級生の悪友ふたり(テル、ふとし)が好きなだけ回転させたのち椅子はキャスターによって徐々に弟とふたりで使っていた二段ベッドの柱に接近の後、頭をコチン!とその柱にぶつけた時か。あれだね。たぶんあれだね。貴様は全てを焼き尽くすような大声で泣き叫び、テルとふとしは慌てて出ていったかと思ったらその日の晩にふたりは両親と一緒に菓子折りを持って謝りにきたんだね。まあそんなことはどうでもいい。とりあえず一旦食べかけのパンを仕舞っておくためのケース置いてもらっていいかな。」とか言ってくるので、これはママの言ったことをただの一言も間違えずベタ起こしにしたものであるけれども、言ってくるのでガン無視していましたというのは我がこんなように今のようになってしまいましたのは愛馬CD125モーターサイクルダイアリーズっぽくカスタムで今里筋をバイト先に向かって疾走していた際に詳しいことは伏せますがどう優しく見積もっても0:10で彼方が悪い事故で頭をコチン!してしまった時から僕はこの世の嘘や建前の全てが無くなった世界で暮らしています。

 

 

ここは俗に言う第三世界、サード・ワールドです。ここは平和で心地よく、私は毎日、フリーダムの限りを尽くしております。まあフリーダムの限りってのは嘘やけど、でもよ、でも叶わない夢なんてないんだ。ざまあみやがれ。