
ほれ見れ、あれがハレーション兄さん。俺は大根屋さん。ここいらじゃちょっぽし有名なハレーション兄さん。俺は大根屋さん。街のみんなはハレーション兄さんのことをばバカにしくさって「あの八百屋のせがれのどアホ」とか呼んでやがるけどあれはハレーション兄さん。俺は、いや、俺のことはもういいや。
ハレーション兄さんはすごいんだぜ。まず、いろんな遊びを知ってる。なんというか遊びの幅が極端に広い。まだ大学生だぜ?まぁ大学行ってないけど。つーか何もしてないハレーション兄さんだけど。でも遊びがすごいんだよ。基本的に外で遊ぶんだけど(冬でも)もうあれよ、外の使い手よぉ。
いろんな遊びをしたけど、最近一番楽しかったのはお互いに一本ずつほうきを持ってそれを逆さにして地面に垂直に立てる。そしてお互い「せーの」でほうきから手を離して相手の持ってたほうきに向かってダッシュする。相手のほうきが倒れるまでに掴むことができたら成功だ。慣れてくるとお互いの距離をだんだんと離していく。相手との距離が遠くなる分、がんばってダッシュしないといけない。がんばってダッシュして無事にほうきを掴めたときの喜びは何物にも代えがたい。この快感こそがこの遊びの醍醐味といったところか。(著)
一度、僕はほうきを掴めたけどハレーション兄さんはほうきを掴めなかったことがあった。僕はそのときハレーション兄さんにむかって「僕の勝ち。」と言った。言い放った。ハレーション兄さんは勝ちほこる僕を呆れたように、困ったように眺めながらこう言った。
「あのな大根屋さん。これは勝ち負けとかないねん。二人とも成功することに意味があんねん。どっちか片方が失敗したらもう意味ないねん。それをちゃんと理解してるのかどうか、いま大根屋さんを試した。試させてもらった。」
なるほど。ハレーション兄さんはガンジーのようだ。北町ほののび商店街のガンジーと言ったらハレーション兄さん。俺は大根屋さん。
あとハレーション兄さんの遊びというかアカデミックな一面を知れるのがあれ、ハレーション兄さん所蔵のマクロスのカードコレクションを見せてもらいながらそのカードの説明を受けるってやつ。
僕はマクロスのことを全然知らないのですごく勉強になる。でも小学二年生の僕にはちょっと難しいところも多い。しかしご安心を。一通り説明が終わったあとに質問タイムを設けてくれるよハレーション兄さん。なので参加者(僕と友達のシシアキ)はメモ帳を持参して質問を書き留めておいて質問タイムに臨むんだ。質問タイムにあまり質問しないとハレーション兄さんは若干不機嫌というかガンジー的な思慮深い感じになるので「ひとり3つは質問する」という不文律が僕とシシアキのあいだでできている。僕らは小学校で一番のマクロス博士だ。別に不名誉じゃないよ。何言ってんだよ。
ハレーション兄さんは来月からメンテナンスの仕事に就くらしい。昨日遊んだときに言っていた。
「俺は来月から仕事で忙しくなるから、もうお前らとはあんま遊んでやれへん。仕事し始めたら家に帰るのも遅くなるし、彼女とかもできるやうから忙しくなるねん。まぁ二度と遊べへんってことはないやろうけど、一応マクロスのカード一枚ずつやるわ。」
そういってハレーション兄さんは僕たちに一枚ずつマクロスのカードをくれた。シシアキは「このキラのカードがいい。」と言ったけど「それはちょ無理。」と言われていた。
ハレーション兄さんのメンテナンスの仕事が落ち着いたらまた遊びたい。