
今日もまた悪に対し殴る蹴るの暴行、つまり武力による制圧でものごとを解決している。しかしトドメは刺さない。それをやってしまうと保健所に連絡したり、警察に状況を説明したり、無縁仏としてお寺に骨を持っていったりと面倒だし、なにより観衆が引いてしまう。
だから抵抗できなくなるまで痛めつけて、ちょっとした説教的なことをした後、決めゼリフを吐いて颯爽とその場を去る。決めゼリフは観衆のテンションによって微妙に変えたりもするが、基本的には毎回同じセリフだ。
虫の息になっている悪をその場に残し、観衆の喝采を浴びながらバイクにまたがり颯爽と走りだす。沿道は私の活躍を目の当たりにしたこども達で溢れかえっている。
輝く瞳で私に手を振るこども達。
正義の味方正義さんとして日夜活動している私。
そんな私に、さっき倒した悪が息もきれぎれに私に吐いた言葉を思い出す。
「これがおまえの望んだ正義なのか?」
まぁ正直ちょっとウッてなったでしたけどそもそも話し合いで解決しようとしない悪どもが悪いわけで、私は悪どもが暴れるからガッといくわけで私だってできれば誰も痛めつけずに解決したいわけなんですね。それをなんかこうもうなんか俺がちょっと間違ったことをやってる感じになってて。すげームッときました。悔しかったら俺より強くなって俺を倒せよ。お互いほら持ちつ持たれつみたいな関係でやってんだからあんまそうゆう、ちょっと正義について考えさせられるようなことは言わないでほしいです。あんまりあれだと本部にクレームいれますよ。