落馬っちゃんのこと

落馬っちゃんのことを少し詳しく。

落馬っちゃんは僕の幼稚園からの友達です。

落馬っちゃんというのはもちろんあだ名で、本名は西奥祐樹というんですが、彼のことを本名で呼んでいる方を僕は見たことがないですね。

幼稚園の先生ですら、落馬っちゃんのことは落馬っちゃんと呼んでいましたから。マジですから。

現在の姿からは想像もできませんが、少年時代の落馬っちゃんはとても元気な子で、明るく、いつも友達に囲まれているクラスの中心的な存在でした。

「おはようさん。みんなテンションどう?鬼ごやる?ドッヂにする?ほな休み時間場所取りダッシュせなあかんなワレ。ただオレは落馬だけは絶対にせえへんから。これ、みんなと約束するわ。ほな。」

落馬っちゃんはいつもこんな感じでクラスメイトたちをまとめていました。

「俺は昔ガキ大将だったんだぞ。」とほざいている方の9割が嘘、むしろいじめられっ子、補欠、酸い目の青春時代なのに対し、落馬っちゃんがもう少し年をとって「僕はガキ大将だった。」と言い始めても誰もそれを咎めないでしょう。

今でこそ猿そのものみたいになってしまっている落馬っちゃんですが、少年時代はそれはそれはみんなの憧れの的でした。

落馬っちゃんこそ真のガキ大将、リーダー、スポーツマンシップ、キャプテン、委員長、先生に堂々と意見できるタイプ、副キャプテン、雇用する側、親戚みな大卒、二丁拳銃、コンビニのホットスナックを幼稚園のときから買ってる、義勇兵、平和と繁栄の象徴、民間療法に異常に詳しい、なにかのネイティヴ、与党、考えオチみたいなことを言う、愛、そんな存在でした。今の彼から、誰がそんな過去を想像できるでしょう。

あまり今の彼について多くを語るべきではないとは思いますが、5年ほど前にあった小学校の同窓会で久しぶりに彼、落馬っちゃんに会いました。

そのときに見た落馬っちゃんの変わり様に、同級生のみんなは驚いたものです。

あのみんなのリーダー落馬っちゃんが良くいえば赤ちゃん、悪くいえば(先ほども申し上げましたとおり)猿そのもの、かつてのカリスマ性を微塵も感じさせない変貌ぶり、乾きものばっかり買ってくる、EXILEを好んで聴く、襟を立ててる、なんか常に揺れてる、グラサン、元高校球児、映画館でポップコーンを買う、英単語を極端に知らない、型落ち、全然おもんない、東京に対する敵意、実家暮らし、雇われる側、一人称が複数形、親戚みな中卒、棒程度の道具しか使えない、捕虜、元高校球児のやつは九割全然おもんない、嫁ブス、そんな姿に心も体も変わり果てておりました。

なんとなくかつての同級生たちは落馬っちゃんから距離を置いて積極的に話しかけるものはおらず、盛者必衰、隅のほうでビールをチビチビ飲んでは近くのグループに話しかけて苦笑いされておりました。

後から知ったのですが、落馬っちゃんは大学2年の夏に行った乗馬体験で運悪く落馬してしまったそうです。

小学校のころ毎日うわごとのように「俺は落馬だけは、それだけはせえへんから。これ、みんなと約束するわ。」と言っていた落馬っちゃんが落馬した。

落馬によって落馬っちゃんの人生が今のように変わってしまったのかどうかはわかりませんが、落馬して以来落馬っちゃんは大学に行かなくなり毎日ギャンブル漬けの後に中退、地元に帰って働きもせず後輩と車でジャスコに行ってばかりだったそうです。

こうなってしまったのは他ならぬ本人の責任ではありますが、落馬によってそこまで没落してしまうなどと誰が思うことでしょう。

 

そもそも「落馬っちゃん」なんてあだ名つけたん誰やねん。由来なんやねん。